葬儀の清めの塩 使い方 / 成田 八富成田斎場
2021/01/14
今回は葬儀場で配られる清めの塩と使い方等についてお話してきます。
葬儀に使われる塩とは、体を清めるためのものです。一般的に会葬礼状や香典返しに挟まれています。
古くから、死は穢れと考えらえれていました。その為、葬儀に参列した際には穢れを自宅に持ち込まないように、車に乗る前や自宅の玄関先で葬儀場で手渡された塩を振りかけるといった習わしがあります。
ただし、死を穢れと見なしていない宗教や宗派では塩を使いません。
一般的に神道では死を穢れとして捉えています。
諸説ありますが、穢れとは「気が枯れる」状態で、生きる力が衰えている状態をいいます。気が完全に枯れてしまう状態が、死という考えです。
穢れというのは、生きているものから見た場合、ある意味異常で不潔な状態と考えられています。そして穢れである死は、生きている者にも伝染すると解釈されています。
そのため、神道では家族が亡くなった際には一定の期間家にこもり、穢れが浄化されるのを待つ必要がありました。また、葬儀に出席して、故人の死に触れた者も穢れていると見なされてきました。
こうしたことから、ほかの人に穢れが伝染らないように、葬儀の参列者の体を清める必要がありました。そこで利用されたのが塩です。
現在でも、葬儀の会場で穢れを遠ざけるために塩が手渡されますし、自宅に入るまえに塩を体にかけて邪気を払う風習も残っています。
葬儀に使われる塩には、2つの役割があり、1つは先述した通り、穢れを祓う役割です。そして、もう1つの役割は、細菌の繁殖を抑えるためと言われています。
塩は安定した物質で、長期間の保存に適した劣化の少ない物質です。干物などに利用されることからも想像できると思います。現在のようにドライアイスで遺体を冷やして保存することができなかった時代は、塩の性質を利用して死体が腐敗するのを遅らせていました。
また、塩には水と火の力が備わっているといわれることもあります。これは塩の精製時に「海水」を「火」で煮詰めるためです。そのため、水と火の力でつくられた塩は「不浄なものを洗い流す水」と「不浄なものを焼き尽くす火」の浄化作用が込められているとされています。
こうした考え方から、目に見えない穢れに触れる葬儀で体を清めるために塩が手渡されるようになったといわれています。
塩は家に入るまえに使います。玄関に足を踏み入れるまえに塩を振り、穢れを家に持ち込まないようにします。
住んでいる地域によっては、車に乗り込むまえに塩を振るケースもあります。
「葬儀場で塩をもらわなかった」「玄関のまえに塩を用意しておくのを忘れた」といった場合には、家族に頼んで塩を手渡してもらうという方法もあるでしょう。
ひとり暮らしの方は、自宅に帰るまえにコンビニなどで塩を購入することで対応できます。
また、宗教・宗派によっては葬儀に清め塩を必要としません。そのため、葬儀に参列する場合は、自分が信仰する宗教に合わせて塩を用意したり、玄関ドアのまえで塩を振りかけるなど対処してください。
また、葬儀場を出てから勤務先などに立ち寄る場合は、会場を出た際に足元に塩を撒くこともあります。こうすることで、スーツなどに塩が残る心配もありません。
葬儀場でもらった、または玄関のまえで手渡された塩を振りかけるときは、胸・背中・肩・足元の順に塩をかけます。そして、床や地面に落ちた塩を踏んでから玄関に入ります。体を清めてから玄関をまたぐことで、穢れなどが家の中に入るのを防ぐという意味があります。
このほかにも、塩を振るまえに水をかけて手を清めることがあります。
今回は葬儀で使われる清めの塩について紹介しましたが、宗教、宗派によっては塩を使わないこともありますので、塩を用意するかどうかについては確かめておくと良いでしょう。